2009年2月1日 晴れ 

夫・骨折中のため、父に大工仕事を手伝ってもらう。3時のお茶の時間。
「硫黄島ってナニ?」夫「日本軍の前線基地だよ」ふうん。父、唐突に
シンガポール陥落って大騒ぎでさ、バナナはじめて食べたんだよ」
「配給?戦争に勝ったみたいの、わかってた?」
「う〜ん、小学生だったからバナナ旨いなあと思って」

18年前、RCA在学中に「バナナ置き(banana holder)」という作品を作りました。地下鉄で向かいに座っていた女性がいきなりBagからバナナを出して、ばくばくって食べた。「バナナに失礼!もっとちゃんと食べようよ。」と思ったのがきっかけ。バナナ何本も買って、もっとも平均的なカーブと太さを割り出して。なんだったんだ、あの熱意は?と思うけど、いまだにとても嬉しそうにバナナを食べる父の姿が関係していなかったとは言えない。

『バナナ置きによせて』(1991)

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バナナを買いに行った。スーパーの入口近くに本日の特売品としてそれは並んでいた。100グラム10円である。あまり青くなく適度に熟れた傷のない房を手に取る。
6本で、84円。父さんが幼少の頃、高くて食べられなかった代物はいまや下等フルーツに成下がり、誰からも尊敬されない。

暮らしがどんどん便利になって何でも手に入ってしまうから、ヒトは日常どこにでも見られるような“フツウ”のものに目を向けたり、感動したりしなくなる。都会の暮らしは忙しく、情報はぐるぐると私たちの生活の中を駆抜け、立ち止まることも忘れる。みんな、見る、聞くふりはできるんだ。

 食卓の意味も形式も変わってきたかもしれないけれど、世界中どこでも食は人々のくらしと切り離せないもの。食文化をみると、その国の特徴などがよくわかったりする。食はひとつの儀式ーーーーーテーブル越しの笑顔、交わすコトバ、乾杯、誘惑そして涙も。
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ゆったりと椅子に座ってみて下さい。バナナもけっこうイカスでしょう。
確かにぜんぶ似てるけど一つ一つ違います。人間みたいに大きさも長さも色も違うけれど、同じ椅子にすわっています。
どこにでもあるバナナに“ハレ”の場を与えたい。そうしてそれが忙しい誰かの顔に小さな微笑みと驚きを与えることができたら、こんなに豊かなものははないと我ながら、思う。

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